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2025.11.11

クリオネって一体何者なの? 海の天使の意外な一面と謎に包まれた生態に迫る!

投稿日:2025.11.11 更新日:2025.11.11

「天使」「妖精」と呼ばれることの多いクリオネ。透明な体でフワフワと海中を漂う姿は、まさに海の天使です。

海の生き物であることに間違いはありませんが、魚でもなく、クラゲでもない。しかも猫耳のようなものが付いている……。何とも不思議な見た目をしているところが好奇心をそそられます。

またクリオネは、かわいらしい見た目とは裏腹に、意外な一面を見せる生き物でもあります。いまだに解明されていない謎も多くあるとか……。

今回は、クリオネの生態を徹底解剖します!

クリオネの基本情報をチェック!

分類 軟体動物門 腹足綱 裸殻翼足目 ハダカカメガイ科 ハダカカメガイ属
学名 Clione elegantissima
標準和名 ハダカカメガイ(裸亀貝)
英名 Sea Angel
分布 北極域、オホーツク海などの冷水域n
体長 約0.5~3cm
寿命 不明(飼育下では最長約2年)
見た目
  • 半透明の体をしており、内臓が赤く透けて見える
  • 触覚が付いている
  • 翼足(フリッパー)という羽のような足がある
  • えらがない
  • 幼生にはつぼのような貝殻が付いているが、成長すると貝殻を脱ぎ捨てる

クリオネは本名ではない?

クリオネの正式名称は「ハダカカメガイ(裸亀貝)」といい、ハダカカメガイ属の一種です。私たちが呼んでいる「クリオネ」という名称はハダカカメガイ科の学名「Clione」から来ており、ギリシャ神話に出てくる女神クレイオーから名付けられたとされています。

かわいらしい見た目なのでハダカカメガイと呼ぶよりも、クリオネの方が似合いますよね。

「流氷の天使」「氷の妖精」と呼ばれるのはなぜ?

クリオネは水温2度以下の冷たい海を好み、温かい海には生息しません。ロシア沿岸やカナダの北部、北海道のオホーツク海側などでよく見られます。日本には流水と一緒にやってくるため「流氷の天使」「氷の妖精」などのあだ名が付いています。

なお、クリオネの英名も「Sea Angel」です。

私たちが知っているクリオネは数種類のうちの一種

クリオネにはさまざまな種類がいて、私たちがよく目にするのが「ハダカカメガイ」です。他にも「タルガタハダカカメガイ」「ヒョウタンハダカカメガイ」など、見た目が少し異なるクリオネの仲間が何種類かいます。

クリオネは体長が約0.5~3cmととても小さいのが特徴ですが、体長が約8~10cmと大型の「ダイオウハダカカメガイ」と呼ばれる種類も存在します。

不思議な見た目の特徴

クリオネは半透明の体をしており、赤やオレンジ、黄色の内臓が透けて見えます。

また頭部に生えている猫耳のような突起は触覚で、羽を広げている腕のように見える部分は翼足と呼ばれる足です。クリオネはこの翼足をパタパタと動かしますが、移動するほどの力はなく、基本的には海中を漂って生活しています。

さらに、クリオネにはえらが見当たりません。呼吸は皮膚で行っており、水中の酸素を体内に取り込める仕組みになっています。

雌雄同体で交尾をする

クリオネは雌でもあり、雄でもある雌雄同体の生き物です。お腹をくっつけ合ってダンスを踊るように交尾をし、翌日には何百、何千という卵の塊を抱卵します。交尾は4時間にも及ぶこともあるのだとか。

クリオネの意外な一面とは?

天使のようにかわいらしいクリオネですが、意外な一面がいくつも隠されています。ここからはクリオネの素顔を探っていきましょう……!

実は巻き貝の仲間

基本情報のところでさらりと触れてしまいましたが、クリオネはイカやタコと同じ軟体動物で、巻き貝の仲間です。卵からかえった直後はつぼのような貝殻に覆われていますが、生後24時間ほどで殻を脱ぎ捨てます。殻を破るまでが爆速です……!

またイカやタコと同じく、細かな歯がいくつも並んだ器官があります。餌をやすりでこするように削り取り、消化しやすくする役割があります。

食事中は悪魔のような姿に!

クリオネは肉食動物で「ミジンウキマイマイ」という巻き貝(共食い!)のみを食べます。ミジンウキマイマイを見つけると、猫耳のような触覚の間をぱかっと開き、バッカルコーンと呼ばれる6本の触手を伸ばして捕まえ、殻の中身を食べます。

つい先ほどまでフワフワと水中を漂っていたのに、獲物を見つけるやいなやバッカルコーンを広げてしつこく追いかける様子は圧巻……! 天使から悪魔に姿を変える瞬間です。

しかも、一度捕まえるとなかなか放しません。これは、ミジンウキマイマイの栄養分をじっくりと吸い取っているから。吸血鬼のようでもありますね。

1年間絶食できる省エネな体の持ち主

クリオネはか弱そうに見えて飢餓状態に強く、1年間絶食できるほど省エネな体の持ち主です。しかし、先ほど紹介したミジンウキマイマイしか食べられず、人工の餌も好まないため、飼育下での寿命は1~2年ほどといわれています。獲物を捕り放題な自然界での寿命は、まだ分かっていません。

天使が食事をする姿は想像がつかないので、これは意外な一面ではないのかもしれませんね……?

クリオネが絶食をしても長く生き続けられる理由も解明されていません。全く動かずにじっとしているのであれば説明が付きますが、クリオネは翼足をぱたぱたと動かします。そのエネルギー源は一体どこから来ているのか、真相は謎に包まれています。

特殊な防御システムを装備している

クリオネには体を守ってくれる殻がなく、泳ぎが得意なわけでもないため、他の生き物の格好の餌食となってしまいそうです。しかし、クリオネの体の中には特殊な防御システムが備わっており、魚に食べられにくい仕組みになっています。

防御システムの正体は、プテロエノンという魚類が嫌う化学成分です。クリオネはこの成分を体内で生成し、魚から身を守っています。

また体の色が透けて内臓が赤く見えているのも、自分の危険性をアピールする防御システムの一つと考えられています。クリオネにも生存戦略があるのですね。

クリオネは家で飼育できるの?

クリオネの展示はさまざまな水族館で見られますが、家でも飼育できるのでしょうか?

クリオネは北海道のスーパーや鮮魚売り場で売られていることがある他、観賞用の魚を取り扱う一部のペットショップでも売られており、家で飼育することは不可能ではありません。

しかし、餌となるミジンウキマイマイは市販されておらず、入手困難なため、飼ったとしても観賞するのみとなります。

またクリオネを飼育するには水温を2度以下に保つ必要があり、冷蔵庫に入れて温度管理を行う必要があるでしょう。

クリオネは海の生き物ですが、水中に酸素を送り込むための海藻やエアーポンプは必要ありません。前述のように皮膚で呼吸をしており、水中のわずかな酸素でも生きられるからです。酸素を含んだ水を1~2週間に1回、3分の1ずつ入れ替えれば問題ありません。

長期飼育をするには、クラゲの飼育のように水槽内を泳ぎ続けることができる水流が必要になります。

反対にエアーポンプで強すぎるエアーを送ってしまうと、泳ぐ力がほとんどないクリオネは水流に巻き込まれて死んでしまう可能性があります。

このようにクリオネを自宅で飼育することはできますが、水族館でも育てるのが難しい生き物です。適した環境を整えられるかどうかをよく考えてから判断した方がよいでしょう。

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