
カツオノカンムリってどんな生き物?
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2025.05.29
投稿日:2025.05.29 更新日:2025.05.29
キラキラと輝く体が美しいタチウオ。サンシャイン水族館で行われた2025年最初のイベント「ゾクゾク深海生物2025」の体験レポートでもご紹介したように、タチウオは深海生物の一種です。
釣り人からは気軽に釣りやすい魚として人気がありますが、水槽で飼育するのはとても難しいことでも知られています。サンシャイン水族館では展示を実施していますが、水槽の中で泳いでいる姿を見られるのは案外貴重なのです。
そこで今回は、身近なようで意外と知らないタチウオの生態に迫ります! タチウオ釣りで使える豆知識もご紹介するので、お出かけ前にチェックしてくださいね。
目次
まずはタチウオの基本情報を確認しましょう。
分類 | スズキ目サバ亜目タチウオ科/td> |
英名 | Largehead hairtail、Sabel fish |
学名 | Trichiurus lepturus |
生息域 | ・北海道から九州までの各地、朝鮮半島、アフリカ、オーストラリアなどの温帯・熱帯の海 ・水深100~350mの海域に生息し、夜になると食事のために水面近くに移動する |
体長 | 全長1m前後 |
産卵期 | 春から秋にかけて、直径1.5~2mmの卵を約4万個産む |
寿命 | 5~8年程度 |
見た目 | ・細長くて平ら ・うろこがなく、銀色で光沢を帯びている ・腹ビレ・尾ビレがなく、尾が細長い ・背ビレが長く、頭部から尾まで続いている ・口が大きく、下顎が突き出ていて、鋭い歯が生えている |
タチウオは北海道から九州まで、ほぼ全国に生息している魚です。日中は水深100~350mの海域で過ごし、夜になると食事を取るために水面近くへ移動します。全長は1m前後ですが、沖縄県で見られるタチウオの仲間、オキナワオオタチは2mに達することがあるのだとか……!
タチウオの体は細長く平らで、腹ビレと尾ビレがなく、尾は先にいくにつれて細くなっていきます。背ビレが長く、頭から尾にかけて続いているのが特徴です。対照的に胸ビレは小さく、旋回する時に胸ビレを動かしバランスを取ります。
顔をよく見ると、下顎から生えた鋭い歯がむき出しになっています。前歯の内側には予備の歯が生えていて、まるでサメのようです。
タチウオの名前の由来には、主に2つの説があります。1つ目は、細長く銀色に光る見た目が太刀に似ていることから名付けられたという説です。英名のSabel fishの「Sabel」は刀剣という意味であることからも「タチウオは刀剣に似ている!」という認識は万国で共通しているのかもしれません。
2つ目は、頭を上にして立ち泳ぎする姿から名付けられたとされる説です。タチウオは基本的には頭を上にして立ち泳ぎをしています。。諸説ありますが、なるべく自分の影を小さくして海中に身を潜め、頭の上を通った魚を捕まえるための体勢だと考えられています。タチウオはあまり泳ぎが得意ではないので、身を守りつつ捕食するために進化した結果なのかもしれません。
危険を感じた時や、急いで移動する時などは、水平に泳ぐこともあるため、、常に立ち泳ぎをするわけではありません。
皆さんは、タチウオが泳いでいる様子を見たことがありますか? サンシャイン水族館で展示されているタチウオは、薄暗い水槽の中でキラキラと光り、神秘的でとてもきれいでした。
タチウオが他の魚に比べてひときわ輝いているのは、体の表面に銀色のグアニンという成分が大量に付いているためです。グアニンには光を反射する性質があり、青魚などのうろこにも付いています。
ちなみにグアニンは、メタリック塗料や模造真珠、化粧品のラメなどに使われている成分でもあります。ネイルやアイシャドウのキラキラは、タチウオとおそろいだったんですね……!
またタチウオの体にはうろこがありません。グアニンは剝がれやすいため、タチウオの体は非常に傷つきやすく、傷口から感染症を起こして死んでしまうこともあります。これが飼育が難しいといわれるゆえんです。
そのためタチウオを飼育している水族館は珍しいのです。
タチウオは産卵期が春から秋と長いため、東京湾ではほぼ一年中、昼夜を問わず釣れます。タチウオ釣りは8~10月頃が良い時期とされており、この頃であればショア(堤防などの岸)から釣れるため気軽に挑戦できると人気です。
タチウオ釣りでは、体の大きさを測る際に「指3本」「指4本」といった独特の言葉が使われるのをご存じですか? これはタチウオの体の幅(体高)を指の本数を使って測る際に使う言葉で、指5本以上は直径約1.2~1.5mの大型、いわゆる「ドラゴン級」という判定になります。
一般的に釣りで魚の大きさを測る際は口の先から尾ビレまでの全長を測りますが、なぜタチウオの場合は体の幅(体高)なのでしょうか。そもそもタチウオは細長いのが特徴なので、長さだけではなく体の幅も重視されるようになったという説があります。
また尾が細くて切れやすいことも、幅を指標とするようになった理由なのではないかと考えられています。指で測るというアバウトさがユニーク……!
タチウオの成長具合を測る際は、「肛門前長」という指標が使われます。肛門前長は口の先から肛門の中央までの長さで、尾の長さは含めません。先述したようにタチウオは尾が切れやすく、仲間同士で尾を共食いすることがあるためです。
水産資源研究センターは、2023年度にタチウオの成長年数ごとの肛門前長を明らかにしています。それによると、1年目で20~24cm、2年目で26~28cm、3年目で27~35cm、4年目で32~37cm、5年目で32~40cmまで成長が見られたということです。
肛門前長は全長の約3分の1とされているため、ドラゴン級の直径約1.2~1.5mのタチウオは約5年ほどかけて成長した可能性があります。
※参考:水産研究・教育機構 水産資源研究所 水産資源研究センター.「令和 5(2023)年度タチウオ日本海・東シナ海系群の資源評価 P.13 図2」.(2025-05-09)
タチウオには「幽霊魚(ゆうれいうお)」という怖い別名があります。諸説ありますが、これは昔、魚群探知機からタチウオの群れが突然消える現象がたびたび起こったことから名付けられたのだそうです。その原因は、タチウオが立ち泳ぎをするタイミングで魚影が小さくなってしまい、魚群探知機に引っかからなくなったからだと考えられています。
最近は魚群探知機が進化したので、このような現象はあまり起こらなくなっているようです。
タチウオは釣り人に人気がある他、夏から秋にかけての旬の時期はスーパーにも並ぶため、私たちにとっては身近な魚かもしれません。一方で弱りやすく神経質な生態をしているため、展示している水族館は少ないことでも知られています。
サンシャイン水族館は、タチウオの飼育に挑戦している数少ない水族館の一つです。2020年11月よりタチウオの展示に挑戦し、2025年4月1日より常設展示を行っています。。間近で見るタチウオが泳ぐ姿は本当に美しいので、サンシャイン水族館を訪れた際は、タチウオの展示を探してみてくださいね!
ちなみに、サンシャイン水族館のタチウオは飼育スタッフが釣っており、その様子はTOKYO HEADLINEで公開されています! ぜひチェックしてみてください。
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