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2021.02.24
投稿日:2021.02.24 更新日:2023.04.04
幻想的な名前にふさわしい、銀色の体と赤色のひれの持ち主であるリュウグウノツカイ。
数ある深海魚のなかでも高い知名度を誇っていますが、その生態についてはあまりよく知られていません。
そこで今回は、謎多きリュウグウノツカイについて調べたことを、詳しくご紹介していきます。
目次
リュウグウノツカイは、アカマンボウ目リュウグウノツカイ科に属する深海魚です。
細長い銀色の体は平均3~5m、中には10mを超える個体もあり、硬骨魚類のなかでは世界最長とされています。
体重も30~50kg程度ありますが、海流に乗ってゆらゆらと立ち泳ぎする姿は非常に優雅です。
また、見た目の美しさにも定評があり、薄い青色の線が並んだ銀色の体に、鮮やかな赤色の背びれがたなびくさまは、とても神秘的です。
腹びれの先端がボートに使うオールのような形をしていることから、「Oarfish」という英名がつけられています。日本では幻想的な姿がおとぎ話に出てくる竜宮城をイメージさせることから、「竜宮の使い(リュウグウノツカイ)」という和名で呼ばれています。
ただ、和名の由来を示す文献が見つかっていないため、誰が・どんな思いで名付けたのかは明らかになっていません。
生息場所は幅広く、世界中の海域において水深200~1,000mあたりに分布しており、日本では北海道~九州の太平洋側と、日本海側、沖縄本島近辺などに生息しています。
体のサイズに見合わないプランクトンやオキアミなどの小さな生物を主食としていますが、それでも寿命は20年に及ぶともいわれています。
リュウグウノツカイが生息している深海は生きものが少ないため、いつでもエサにありつけるわけではありません。
何日もエサを捕食できず、極度の飢餓状態に陥ったリュウグウノツカイは、なんと自分で自分の尾部の一部を切り落としてしまいます。
長い体をコンパクトにまとめることでエネルギーを温存し、生き延びるための手段であると考えられています。
体を切ったら、かえって弱ってしまうのでは?と思うところですが、リュウグウノツカイは生きていくために必要な臓器が体の中央より前に集中しているので、尾部の一部を切っても生きるのに問題はないのだそうです。
ちなみに、ほかの魚に襲われたときや、漁の網にかかりそうになったときも、尾部の一部を切って逃げてしまうことがあります。
トカゲのしっぽ切りに似ていますが、しばらくするとしっぽが再生するトカゲとは異なり、リュウグウノツカイは一度尾部の一部を切ると二度と生えてくることはないと言われています。
実際、これまで目撃されてきたリュウグウノツカイのなかには、尾部の一部が切られていた個体も多く見られたそうです。[注1]
[注1]新江ノ島水族館:相模湾におけるリュウグウノツカイ(アカマンボウ目リュウグウノツカイ科)の記録について[pdf]
リュウグウノツカイをテレビなどで見ることはあっても、水族館などで生きた状態で目にする機会はほとんどありません。
水深200~1,000mの深海で暮らすリュウグウノツカイを生きたまま捕獲するのは難しいうえ、そもそも大きいので不自由なく遊泳させてあげられる水槽を持っている園館も少ないことや、水槽で深海の状況を再現するのは困難であることから、現時点でリュウグウノツカイを飼育するのは非常に難しいとされています。
ただ、2019年2月に、沖縄美ら島財団総合研究センターが世界で初めてリュウグウノツカイの人工授精と人工孵化に成功し、大きな話題を集めました。[注2]
残念ながら、約20匹の稚魚はわずか数日で全滅してしまいましたが、今回の研究をもとに詳しい生態が解明されれば、近い将来、生きたリュウグウノツカイを水族館で見ることができる日がくるかもしれません。
[注2]沖縄タイムスプラス:「幻の魚」人工授精と人工ふ化に成功 リュウグウノツカイ、沖縄で世界初
リュウグウノツカイは、神秘的な見た目と、めったに遭遇できない珍しい存在であることから、さまざまな伝説と関わりがあります。
ここでご紹介するのはあくまでも「伝説」であり、科学的な根拠や証拠となる文献が存在しているわけではありませんので、おもしろ話のひとつとしてお楽しみください。
リュウグウノツカイは通常、水深200~1,000mに生息しているため、海面付近で目撃されたり、捕獲されたりするのは非常に稀なケースです。
そのせいか、リュウグウノツカイが海面付近に現れるのは災害が起こる前触れとされており、日本では忌み嫌われることも少なくありませんでした。
今のところリュウグウノツカイと災害の関わりは解明されていませんが、東日本大震災が起こる1~2ヵ月前や、2018年に発生した大阪北部の地震の前日にリュウグウノツカイが目撃されていることから、災害と関連づけて考える人も多いようです。
日本には、古来より人魚の肉を食し、不老不死になった女僧「八百比丘尼(やおびくに)」の言い伝えが残されています。
比丘尼が食した人魚の正体については諸説ありますが、鎌倉時代に編まれた世俗説話集「古今著聞集」にて、「人魚なのかもしれない」と描かれた大魚の特徴がリュウグウノツカイと似ていることから、人魚=リュウグウノツカイとする説もあるようです。
ちなみに漁網にかかり、リュウグウノツカイを食べた人の話では、水分が多く薄味のため、味はイマイチだということです。
災害の前触れとされるリュウグウノツカイですが、その一方で、網に掛かると豊漁の兆しと喜ぶ人もいます。
普段は深海にいるリュウグウノツカイが海面近くまで浮上するのは、エサとなる魚がたくさんいるから…というのが主な理由のようです。
実際、ノルウェーなどでは、ニシンが大量に釣れるときにリュウグウノツカイが目撃されることがあるため、「King of Herrings(ニシンの王)」という異名が付けられています。
国や地域によって吉兆にされたり、凶兆にされたりする不可思議さも、リュウグウノツカイの神秘性を高める要因になっているのかもしれません。
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