宇宙よりもたどり着くのが難しいと言われる未知の領域「深海」ってどんなところ?
地球最後のフロンティアなんて呼ばれることもある「深海」。地球上で唯一人間が到達していない場所で、なんと、宇宙よりもたどり着くのが難しいと言われています。 人間が簡単にたどり着けないのは、特殊な環境のせ…
2020.12.23
投稿日:2020.12.23 更新日:2022.03.22
ついに…! いきふぉめ〜しょん編集部は、池袋を飛び出して…駿河湾へ! サンシャイン水族館で行っている、水中ドローンを使った深海調査に同行させていただきました。
これまでもイベントレポートなどは行ってきましたが、まさか船に乗ることになるとは思ってもみませんでした(笑)
この記事では、どのように深海調査を行っているのかや調査時の深海の様子などについて、調査中のドタバタ(?)も含めてお伝えしていきます。
果たして、調査チームは、深海生物に出会うことができたのでしょうか…?
目次
深海とは、一般的に水深200mよりも深い水深帯のことで、暗く冷たく、そして高圧の世界です。
水深1000mを超えると、もうほとんど真っ暗闇で、水温は5度以下。そして、水圧は10m深くなるごとに1気圧ずつ増えていくため、水深1000m地点で約101気圧となり、1㎡あたりに1000tもの力がかかります。
人間は肺などに空気を多く保持しているため、圧力の変化による影響を受けやすく、臓器がペシャンコになって息もできなくなってしまうことから、深海のより深いところに行くのは宇宙に行くよりも難しいと言われており、調査には高度な技術と莫大なお金が必要なため、まだ解明されていないことも多いのです。
深海を調査することは、人間をはじめとする生きものの起源を知ることにつながると言われています。
未知の世界だからこそ、そこにはたくさんの可能性が。そのため、さまざまな調査機関が、それぞれの技術を駆使して深海を調査しているのです。
静岡県に面している「駿河湾」は、最深部が水深2,500mに達する日本一深い湾です。静岡県には標高3776mを誇る日本一高い山「富士山」があり、その高低差はなんと6,000m以上!
湾内でそれだけ深いところがあるのですから、駿河湾の海底はかなりの急勾配になっていて、海岸からたった2kmほど離れただけでも水深500mに達するところもあります。つまり、港からたった数kmの範囲で、十分に深海調査ができるんです。
東京からもそう遠くないですし、深海調査をするにはもってこいの場所というわけ。
11月某日。サンシャイン水族館の深海調査チームの5名と、私たちいきふぉめ〜しょん編集部の2名は、静岡県沼津市の静浦港に集合しました。
天気は晴れ。予想最高気温が20度を超えるとても暖かい日で、絶好のクルージング日和! たくさん防寒具を用意しましたが、どうやらいらなそうです(笑)
乗船するのは、「潮丸」という船。いつもサンシャイン水族館の深海調査をお願いしている船だそう!
今回の深海調査は今季3回目。サンシャイン水族館所有の水中ドローンのほか、水中ドローンのメーカー「FullDepth(フルデプス)社」所有の定点カメラ2台も投入します。
しっかりと救命胴衣を着け、水中ドローン本体のほか、ケーブル、パソコン、採集道具なども積み込んで…いざ出発!
晴れてはいたのですが少し雲があって、残念ながら富士山の山頂は見えず…。しかし、暖かな太陽光と海の風がとっても気持ちいい!
港を出たら、まずは「FullDepth(フルデプス)社」所有の定点カメラを投入する、深さ500mのポイントへと向かいます。
向かっている間に、甲板では着々と定点カメラの投入準備が進んでいきます。
500mのポイントに投入する定点カメラは、海の中に入れたときにしっかりと直立するよう、下の方に重りがついています。
右下に伸びている棒の先の黄色いネットの中には、生きものをおびき寄せるためのサバの切り身が。
真ん中の丸い筒がカメラ。上部のライトはとても小さく見えますが、真っ暗な深海ではこのくらいの光でも十分周囲を映すことができるんですって!
準備をしていると、すぐに投入ポイントに到着!
ここから水中ドローンの投入が完了するまで海の上でゆらゆらと揺られることになるのですが、港を出てまだ約30分、1名、また1名と脱落者が出始めます…。
というのも、船って走行中より、止まっている時の方が揺れるんです…! 編集部の1名も早々に脱落…。ちゃんと酔い止め飲んでいたのになぁ…。
担当はというと、時折こみ上げるものがありつつも、どちらかというと日なたぼっこ気分で、うとうとしていました…(笑)
先ほどもお伝えした通り、駿河湾の海底は、かなりの急勾配になっていて、場所によっては崖のようになっている所も。
そのため、投入場所が悪いと定点カメラが倒れてしまったりして、撮影できないこともあるんだそう。
そこを上手く調整してくれるのが船頭さん!
海底の地形がわかるレーダーをもとに、ここが前回の場所だよ〜とか、この辺もう入れていいよ〜とか、ちょっとずれたから動かすね〜など声をかけてくれます。
いよいよ準備が完了し、3人がかりで定点カメラをゆっくりと海へと沈めていくのですが…、まさかの投入シーン撮影失敗…ごめんなさい…。
この定点カメラには、調査する水深の倍の1kmのロープが結んであり、そのロープもゆっくりと海の中へ。
ロープがたるんだり、張りすぎたりしないように、しっかりとテンションをコントロールしながら入れていきます。
きちんと手でコントロールしながら入れないと、ロープがスクリューに絡まってしまったりと、危険なんです!
しかし、1kmのロープをゆっくりと海の中に入れていくわけですから、当然、かなりの時間がかかります。
その間も船は揺れ続け、更なる脱落者が…。
ようやくロープの先端まできたら、そこに大きなオレンジ色のフロートを取り付け、海へ投げ入れます。これで、定点カメラの投入完了です!
もう1台も別のポイントへ投入!
どんな映像が撮れるのか楽しみです! ちなみに、過去4回ほど投入していて、全ての回で何かしらの生きものを撮影できているとのことなので、期待大…!
上手く海底に着地して、何らかの深海生物の姿を捉えられることを願いつつ、今度は、サンシャイン水族館の水中ドローンを投入するポイントへと向かいます。
サンシャイン水族館の水中ドローンで調査するのは、深海の入り口にあたる水深200m~300mのあたりです。
この水中ドローンの映像は、リアルタイムでパソコンの画面を通じて見ることができます。
先端についているのは、深海生物をおびき寄せるためのイカとサバ。
このエサに食いつく生きものがちゃんとカメラの画角に収まるように、かなり考えて取り付けられているんです。
今度こそ投入シーンを…!
男性2人がかりでゆっくりと水中ドローンを沈めていきます。
水中ドローンの操作側はこんな感じ。ゲームのコントローラーで操作をします。
投入時は、降下ボタンを、回収時は、浮上ボタンを押し続けるんです。
先ほどと同じように、ケーブルのテンションを誰かがコントロールしなければならないため、1人が画面を確認しながら、ケーブルをコントロールする人に、今何mですー!とか、海底に着きましたー!などの声がけもします。
1回目は、エサを付けているので水中ドローンを動かさず、生きものがやってくるのをじーっと待ちます。
ちなみに、水中ドローンを動かさないといっても、浮き上がらないように誰かがずっと降下ボタンを押し続けなければならないんです(笑)
初回はずっとこのような感じで、生きものがほとんど見当たりませんでした。
場所を移して2回目は…、い!い!いた!
現れたのは、カサゴの仲間。かなり用心深く、じーっとエサの様子をうかがっています。
いくか? いくか?
…いかなーい。残念!
そしてお次は…ヤドカリ! カサゴとは対照的で、かなり積極的!
食いつくというより、おそらくどこか他の場所に運ぼうと、イカの腕をグイグイ引っ張る。
それは無理じゃないか?と思いつつ、ヤドカリを応援していたら、なんとここで、水中ドローンが潮に流されていきました…。
途中カレイらしきものも横切ったのですが、まさかの完全スルー!
次に現れたのは、アナゴの仲間!
こちらもなかなか慎重タイプで、ずーっと様子見、様子見、様子見…。
そして、やっと食いつこうとしたそのとき…、また水中ドローンが潮に流されていきました…。
画面を見ていた全員が、思わず、わー食べさせてあげてーって…。タイミング…!
と、ギャーギャーしていたのですが…、画面を注視しているのって、酔うんですよね…。途中で危なくなって離脱したりして。
そんな中、顔色一つ変えずに画面を見続けていたのが、いきも〜る担当のタカハシさん。すごすぎる…!
場所を移して3回目は、エサを外して水中ドローンを自由に動かしてみます。
と…、先程とは異なるヤドカリ発見!
かなり近づいていますが、逃げる素振りもなく、じっくり観察できました。
そして、担当も水中ドローン操作をさせてもらいました! …が、とっても難しい!
浮上と降下、前進と後退を上手く使いながら、時には、傾いた本体を水平にする機能も使って、水中ドローンを移動させていくのですが、少し海底から浮かせた状態で動かさないと、すぐに砂を巻き上げて視界不良に。
サンシャイン水族館のカサハラさんは、とっても簡単そうに操作されていてさすがでした!
さて、サンシャイン水族館の水中ドローンによる調査を終え、先に投入した2台の定点カメラの回収に向かいます。
なんとなく投入した位置は分かっても、風や波で移動していて探すのが大変なのでは…?と思いきや、すぐにフロートを見つける船頭さん。すごい…!
投入時も、1kmのロープを入れていくのは大変そうだなと思ったのですが、回収時の方がもっと大変そう!
木の棒を軸にして、さらに、ウィンチという電動で巻き取る機械も使ってロープを引き上げていくのですが、1kmの長さのロープを手動でリールに巻きつけていかなければならず…。
船頭さんのアドバイスを受けながら、5~6人がかりでロープを引き上げていきます。時折、何かに引っかかったように引き上げられなくなった時は、経験豊富な船頭さんに手伝ってもらい、無事2台の定点カメラの回収が完了!
後日、どんな映像が撮れていたのか聞いてみたところ、深海ザメの一種であるユメザメやタカアシガニが撮影できていたそう!
サンシャイン水族館のタカミヤさんに、船酔いは陸地を3歩歩いたら治ると言われましたが、港に到着後、下船して3歩でちょっと気分が悪かったのがすぐに治りました…! すごい…!
荷物を船から下ろし、水中ドローン本体やケーブルなど、海水がついているものを水道水で洗い流したら現地での後片付けは完了。
この日は、天気がよかったこともあり、担当が操作をミスって砂を巻き上げた以外は、ずーっと水中は視界良好。最高の調査日だったと思います。
大物発見!とはなりませんでしたが、それなりに生きものとの出会いもあり、まずまずの収穫だったのではないでしょうか?
今回、調査に同行してみて、改めて深海調査の難しさを実感しました。
5時間ほど船に乗っていたのですが、定点調査も含めて、調査できたのはたったの5スポット。どうしてもスポットごとにしか調査ができないため、駿河湾内を隅々まで調査するには、水中ドローンを何度も、それもかなりの回数沈めなければなりません。
また、水中ドローンが対応できる深さにも限界があるため、そもそも、そう簡単に水深1000m以上の場所を調査することはできないでしょう。駿河湾の調査ですらものすごく大変なのですから、地球の約70%を占める広大な海全体を調査するなんて至難の技です。
今回とっても貴重な経験をさせていただき、また深海調査について、情報発信をすることができ、とても良かったなと思っています。
サンシャイン水族館の深海調査チームのみなさん、潮丸の船頭さん、今回は同行させていただきありがとうございました!
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