作家さんに聞いてみた!⑤ sunokko design編
いきものグッズ専門ネットショップ「いきもーる」には、たくさんの個人作家さんたちのグッズがラインナップされています。 素敵ないきものグッズを生み出す作家さんたちは、一体、いきものに対してどれだけの愛を持…
2024.03.08
投稿日:2024.03.08 更新日:2024.03.08
2024年最初の大・大・大ニュース! サンシャイン水族館が、水中ドローンを使った深海海底調査にて、新種の生き物を発見しました! その名も……「トリノアシヤドリエビ」。
謎のヴェールに包まれたこの生き物のことを皆さんにもっとよく知っていただくために、今回『いきふぉめ〜しょん』編集部は、採集チームの皆さんへ突撃取材を実施! 発見までの裏話から、採集したスタッフ本人のコメントまで、盛りだくさんでお届けします。
それでは行ってみましょう!
目次
2023年11月30日、サンシャイン水族館が静岡県駿河湾で採集したエビが、新種・新属の生き物「トリノアシヤドリエビ」として論文公表されました。採集日は半年以上前の2023年2月24日と4月27日のこと。そこから千葉県立中央博物館の駒井智幸氏と共同研究が進められ、この度とうとう新種としてのお披露目を迎えたのです。
トリノアシヤドリエビは、水深130〜200mの海底で採集した「トリノアシ」という生き物に共生しているところを発見されました。
共生とは、異なる種類の生物が、相互に作用する状態で生活する様子を指す言葉です。有名なところでいえば、ジンベエザメとコバンザメの関係や、クマノミとイソギンチャクの関係なら「知っている!」という方も多いのではないでしょうか? トリノアシヤドリエビにとって、トリノアシは大事な住処なのです。
このトリノアシを住処にしているという生態が特徴的だったため、そのまま「トリノアシヤドリエビ」という名前が付きました。
採集されたトリノアシヤドリエビは、頭胸甲長1.3mmの幼体と、頭胸甲長3.2 mmの卵を抱えたメスです。外見は普通のエビですが、トリノアシが生息する深海においてどのくらい珍しいものなのかは、実はまだ判明していません。特徴として、歩脚の大部分が透明になっており、これには外敵から見つかりづらくなる効果があるようです。
一方で、トリノアシに共生する十脚類が記録されるのは、世界的に見ても大変貴重な発見だそう! いまだ全容が明らかになっていない深海の世界において、今回サンシャイン水族館が水中ドローンを使って新種の生体を発見し、さらには記録・収集と学術的に大きく貢献できたことは、『いきふぉめ~しょん』編集部としても誇りに思います。
今回トリノアシヤドリエビを新種・新属として公表するために研究対象となった2個体は、標本となり千葉県立中央博物館に収蔵されているそうです。
ここで、トリノアシヤドリエビを実際に採集した、サンシャイン水族館の先山さんのコメントをご紹介します!
他の生物に寄生や共生をするエビはいくつか知られていたので、発見した当時は、トリノアシに付着生活するエビもいるのかという驚きがありました。何という種のエビなんだろうという興味もあり、駒井氏に同定(分類学上の所属を正しく決めること)を依頼していました。
今回の論文が発表された際は、当館のドローン調査で新種発見という一つの結果を残すことができたという安心感が大きかったです。
なんと……プロでもびっくりしてしまうような発見だったんですね……。
ここで、トリノアシヤドリエビのパートナーである「トリノアシ」にも注目してみましょう。
トリノアシとは、ヒトデやウニといった棘皮動物の仲間である、ウミユリの一種です。30〜50cmほどの細長い茎と無数の花弁のような腕を持っており、その見た目が鳥類の脚に似ていることから、「トリノアシ」と名付けられました。
トリノアシは水深100〜150mの海に生息し、茎の根元の巻枝を使って岩などに体を固定させています。花弁のような腕部分を持ち上げて、水中を浮遊している有機物や微生物をエサとしている深海生物です。
それでは、今回トリノアシヤドリエビの発見に至った静岡県にある駿河湾とは、いったいどのような場所なのでしょうか?
駿河湾は海岸からたった2kmほど離れただけでも水深500m、最深部となると水深2,500mにも達する、日本一深い湾です。サンシャイン水族館がこれまで行ってきた、世界初のプラスティネーション標本で話題となったヨコヅナイワシの採集や、2000m以深の定点カメラでの撮影も、駿河湾で行っています。東京からもほど近く、遠洋まで出なくとも十分に深海海底調査が可能です。
つまり駿河湾は、深海生物を見付けたり、深海の秘密を探ったりをするにはもってこいの場所なのです。
サンシャイン水族館では2019年より、定期的な深海海底調査を行っています。先ほどご紹介した静岡県の駿河湾を中心に、水深200m付近を調査し、未知の領域・深海を解明する研究に取り組んでいます。
活躍してくれるのは、小型で遠隔の操作性に優れたFullDepth(フルデプス)社製の水中ドローン。現在では、写真の状態からさらにカスタムが進み、深海生物をしっかりとキャッチできるアームが追加されています。
これまでにサンシャイン水族館が水中ドローンで採集してきたのは、トリノアシやウミシダの一種など、海底でじっとしているタイプの生き物がメインです。例えば水中ドローンでトリノアシを採集するには、事前にポイント調査をしっかり行った上で、さらに採集ポイントを設定して調査、採集に取り組まなければなりません。どこにでもいるわけではないのです。
他の手段として、底曳き網で深海生物を採集することもありますが、トリノアシが生息しているような岩場が点在する場所では行えないため、あまり多くは採集できない生き物で、状態良く採集が難しい生き物といえます。
またこれまでの調査で得られた情報やデータは、深海生物の飼育にも生かされています。過去には日本初となるゾウギンザメの孵化(2020年)や、メンダコの国内最長飼育(2022年)にも成功しました!
採集の瞬間は、ぜひ動画でチェックしてみてください!
2:00辺りで、水中ドローンのアームがトリノアシをギュッとつかんで引っ張り上げる様子が見られます! 真っ暗な深海から徐々に明るい海上へと引き上げる時間は、8分程度。トータル10分でようやく海上にたどり付いたところを、網でキャッチしています。
担当はこの動画を目を皿にして見てみましたが、わずか3mmほどのトリノアシヤドリエビ、やはり見付けることができませんでした……。(確認できた方、ぜひご連絡ください!)
※ちなみに赤◯のところにいます。
最後に、エビの発見から新種と公表されるまでの大まかな流れを、先山さんに聞いてみましょう。
2022年12月よりトリノアシの生態調査と採集を行っており、一度目のトリノアシヤドリエビの採集は、トリノアシを目的とした調査の際に一緒に引き上げました。とはいえ、その場でエビを目視で確認できていたわけではなかったため、採集した時点ではエビが付いていることに気付くスタッフはいなかったです。採集したトリノアシをバケツに複数収容していたのですが、よく見るとその中にトリノアシヤドリエビがいました。非常に小さな幼体だったため、いつ採集できたかすら不明です……。
エビの存在に気付いてからは図鑑を使用し、どのような種類の生物なのかを調べていましたが、結局のところ分からないままに終わってしまいました。
まさかの、偶然の産物だったなんて!
二度目の採集では、トリノアシと共生しているであろうエビの採集を狙って、トリノアシを1個体1個体確認しながら調査を行いました。ドローンのカメラでしっかりと目視でエビがトリノアシに付着していることを確認し、動画の撮影、採集に成功しました。この採集では幸いにも卵を持った成体を採集でき、そのエビが成熟個体であることの確認もできました。
このエビについても図鑑を元に種類を判明させようとしましたが、当館スタッフでは同定に至りませんでした。そこで、甲殻類十脚目の動物分類学を専門とする千葉県立中央博物館の駒井氏にサンプルを提供し、同定の依頼を行いました。
2回目はエビ狙いで調査に向かったんですね~。
その後、7月頃に駒井氏より一報が入り、DNA解析の結果、新種・新属になりそうなことが分かりました。
まさか新種で、しかも新属になるとは思ってもみなかったため、喜びより驚きが大きかったです。
予想外の結果だったとは! 現場も大いに盛り上がったことでしょう。
サンシャイン水族館は、深海生物の映像や生息環境などの情報を集めて生物飼育や展示に活用するだけでなく、深海についての情報を発信し、広めることを目標としています。
今回、新種・新属として公表に至ったトリノアシヤドリエビに続く報告ができるよう、これからも水中ドローンを使った調査のエリアを広げ、より良い採集ポイントを開拓していきます。またドローンアームの改善を重ね、新しい採集方法を模索していく予定です。
今後も挑戦を続けるサンシャイン水族館の深海海底調査、ぜひ応援してくださいね!
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