あの生き物にも毒があった!?海や磯に潜む危険な生き物【前編】
海の中や磯にはさまざまな生き物が生息していますが、なかにはとても危険な生き物もいます。 そこで今回は、海や磯に潜む危険な生き物の生態と、どんな危険性を持っているのかについて徹底解説します。 今回紹介す…
2021.09.28
投稿日:2021.09.28 更新日:2022.03.22
サメについて知ってもらおうと今回は・・・、
「サメ談話会」や「サメサメ倶楽部」を主宰してサメの魅力を日々発信し、自ら生態系の調査をしながら食べる研究もしている日本唯一のシャークジャーナリスト 沼口麻子さんにサメについて語っていただきました。
天狗の爪を実際に見たことがある人はいますか?そんな空想上の生き物の痕跡など見つかるはずがないでしょうか?
実は、国内では宮城県や埼玉県、茨城県などから出土されているのです。
海の生き物が好きなあなたなら、ピンときたはず。天狗の爪の正体とは、メガロドンという絶滅したサメの歯の化石だったのです。これらは約2300万年前~260万年前の地層から出土され、大きいものだと長さが18cmくらいもあり、手に持った感じもずっしりと重たいです。
これが天狗の爪といわれているものの正体。メガロドンは古代ギリシャ語で「大きな歯」を意味する。
現在、地球上に存在するサメの中で、最も大きな歯を持つのはホホジロザメ。そんな彼らでさえ、歯の長さは7cmくらいしかありません。そう考えると、ホホジロザメの2倍以上のサイズがあるメガロドンの歯は、とんでもなく大きいですね。
歯が大きいということは、魚体も大きいのでしょうか。残念ながら、メガロドンの全身の化石はまだ世界中のどこからも見つかっていないので実際の大きさはわかりません。ホホジロザメが全長約6mであるのに対し、メガロドンの推定サイズは13~18mです。つまり、最大の魚類ジンベエザメくらいの大きさだったといわれており、現生のサメと比較しても大型であったことは間違いなさそうです。
どのサメと近縁なのかは議論の分かれるところではありますが、ホホジロザメに近い仲間だったのではないかと考える人もいます。その証拠にメガロドンの復元図やメガロドンをテーマにした映画のポスターには、ホホジロザメを巨大化したようなイラストがよく描かれています。
よく見ると、歯の縁がギザギザしていることがわかる。これは専門用語で「鋸歯(きょし)」という。ホホジロザメの歯にも鋸歯がある。
メガロドンはまだ生きているという人がいます。そういった人の中には名前が似ているので、メガマウスザメとメガロドンを混同してしまっている人が少なくないようです。
メガマウスザメとは、どんなサメなのでしょうか?
メガマウスザメは現生のサメで、プランクトンを食べるおとなしいサメです。
一方で、メガロドンは絶滅してしまっているサメなので、全くの別の種なのです。しかしながら、巨大で大きな歯を持つサメが大海原を力強く泳いでいたと思いを馳せるだけで、ワクワクが止まらなくなるのは私だけでしょうか。そんなサメ好きの人の心の中でメガロドンは今も泳ぎ続けているのかもしれません。
よろシャーク。
【ひとことコーナー】
とあるお寺に天狗の爪が祀られていたので、「メガロドンですね」と言ったら、失礼だとすごく怒られたことがあります。天狗の爪が祀られているところでは、皆様も発言にはくれぐれもお気をつけください。それはメガロドンの歯の化石ではなく、天狗の爪なのですから。
漁師さんから「大きなサメが水揚げされたぞ!」との連絡が入ったのは早朝のこと。場所は千葉県館山市。都会に面した東京湾の入り口であるこの場所は、多種多様な面白いサメの目撃情報が絶えない場所です。
漁師歴24年の漁師さんも、ここの海域で初めて見たサメだということ。深夜に操業していた水深70mの巻き網漁に迷い込んだそうです。2020年7月18日、サメフリークの小学生も多く参加する『サメサメ倶楽部』のメンバーとともに現地に駆けつけました。
現地に着くと、漁師さんがカチカチに凍った巨大ザメを解凍してくれていました。解凍中のサメは背中の一部分しか見ることができず、この段階では何ザメかはわかりませんでした。
2時間ほど経過して、フォークリフトを使い、水の中から大きなサメを出してもらいました。それは水深2500mの深海でも目撃例のある大型の深海ザメ、カグラザメ(カグラザメ目カグラザメ科)でした。
カグラザメは他のサメと違う点が2つあります。1つしかない背ビレ(大多数のサメには2つの背ビレがある)と6対あるエラの孔です。現生のサメの中でも古くから地球上にいたサメといわれています。
◆水揚げ当日のカグラザメ
メジャーで測ったところ、全長は4m。次に体重を測ろうと試みましたが、サメが重すぎて、フォークリフトに引っ掛けたロープが切れてしまい、計測することはできませんでした。「カグラザメの肝臓は体重の約5分の1の重さだ」という既知の研究から、肝臓の重さを測って、体重を推定することにしました。
お腹を切ってみると、内臓のほとんどは大きな肝臓で占められていました。浮き袋を持たないサメにとって、大切な浮力調整をするための器官でもあります。肝臓を取り出して体重計に乗せたかったのですが、想像を絶するほど大きくて、脂質がたっぷり。ヌルッとしていて、うまく手でつかむことができませんでした。更には、肝臓から滲み出した脂により、床がツルツル滑って危険な状況になってしまいました。
肝臓の重さの測定は前途多難でしたが、色々考えた結果、肝臓をいくつかのぶつ切りにして、手分けして測りに載せることにしました。それらを合計すると、肝臓の重さになるというわけです。結果、肝臓の総重量は102kg。それを5倍した数値が体重となるので、このサメの体重は約510kgだと推定されました。
深海から突如現れた4mのカグラザメ。サメの大切な命を無駄にしないように、この後、生殖腺など、全身をじっくり調査させてもらいました。わかったことは、まだ大人になっていないメスだということ。一体全体、どれくらいの大きさになったら大人になるのでしょう。深海の冷たい海域ではそれまでに後何年かかるのでしょう。まだまだ解明されていないサメたちの生態。サメに対する探究心はまだまだ尽きないようです。
よろシャーク。
協力: 館山 寅丸様
【ひとことコーナー】
『サメサメ倶楽部(https://lounge.dmm.com/detail/645/)』とは、サメが大好きなキッズがサメの勉強会をしたり、解剖実習をしたりするサークルです。ぜひ私たちと一緒にシャーキビリティをあげませんか?
1970年代に「ジョーズ」という映画が世界的な大ヒットを遂げました。それから約50年間、サメは悪役としてメディアに取り上げられ続け、世の中には必要以上にサメに対する悪いイメージを持っている人が多いように感じます。その反面、サメが魅力的な生き物であることも多くの人が感じています。
私もサメに魅力を感じているひとりで、特に彼らの好きなところは口元です。そこから覗く、鋭い歯は怖いという象徴であると同時に、きらりとしたエナメル質の光沢は宝石のように輝いていて大変美しいのです。
今回は3種類のサメの歯の形を観察して、2つの専門用語を学んでみたいと思います。
これはジョーズのモデルになったといわれているホホジロザメの歯です。
二等辺三角形のような形をしていて、厚みは薄く、カミソリのような切れ味があります。歯の両縁には細かいギザギザがあり、これを専門用語では鋸みたいな歯と書いて「鋸歯(きょし)」といいます。鋸歯はナイフのような役割をするので、自分よりも大きい餌生物を噛みちぎることができます。ホホジロザメはしばしば、アザラシなどを捕食している姿が目撃されています。
次はシロワニの歯を見てみましょう。
歯の縁にはギザギザした鋸歯がなく、つるっとしています。以前、小笠原でシロワニを解剖したときに、お腹の中からホオアカクチビという40cmくらいある大きなフエフキダイの仲間が丸々2尾も出てきたことがありました。フォークのように尖った歯は、魚類を突き刺して飲み込むことに適している歯であることが伺えます。それからもうひとつ。大きく尖っている歯(主咬頭)の付け根の両端には小さな突起物があります。これは専門用語で「副咬頭(ふくこうとう)」といいます。
ネズミザメなどにも同じような副咬頭が確認されています。
最後は一風変わった平べったい歯をみてみましょう。これはカグラザメの1本の歯です。研究者が海の中にクジラの死骸を沈めた実験では、カグラザメが近寄って来て、肉をむさぼるシーンが撮影されました。彼らは腐った生き物の死骸も食べるのです。
それではここでクイズです!
カグラザメの歯は、どこが「鋸歯(きょし)」で、どこが「副咬頭(ふくこうとう)」になるのでしょうか?
正解は。。。。
一番左側にあるとても小さなギザギザが鋸歯でした。目をこらさないとよく見えないくらい小さいです。また、左側の一番大きく尖った突起(主咬頭)を除いたいくつか連なる突起が副咬頭になります。
いかがでしたでしょうか。
ちょっと難しかったですね。
今回は「鋸歯」と「副咬頭」の2つの専門用語を学びました。
このワードを覚えて、あなたもシャーキビリティアップ!
よろシャーク。
【ひとことコーナー】
以前にサメのいるタッチプールで1mmくらいのとても小さなサメの歯を見つけたことがあります。サメのいる水槽があったら、底にはたくさんの歯が落ちている可能性が高いので、水槽内を隅から隅までじっくり観察してみるのも、水族館の楽しみ方のひとつかもしれません。
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